どれが1番好き!?ドラえもんに存在する4つの最終回
もはや日本を代表するアニメの1つとも言えるドラえもん。作者の藤子先生が亡くなられてもうどのくらい経ったろう?
それでもドラえもんは最終回を迎えることはなく、恐らく今後も続いていくはずだ。
しかし実は、ドラえもんにはひっそりと最終回が存在していた。
知らない人が多いかもしれないので、今回はこのエピソードをご紹介したい。
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ここがポイント!
二次創作や都市伝説ではない、ドラえもん作者による公式の最終回
ドラえもんの最終回と呼ばれるのは「ドラえもん未来へ帰る」という話である。
このストーリーはドラえもんファンの間では「最終回」としてかなり有名だったが、長い間コミックス収録やアニメ放送をされることがなく、一部では「封印された最終回」とも語られていた。
ところが2009年に発売された「藤子F不二雄大全集」に収録され、ドラえもんスタッフ公認であることがやっと判明した。気になるストーリーを少し紹介しよう。
ある夜、のび太が目を覚ますと部屋を横断する半透明の人間が大勢いた。(というと、だいぶシュールな光景ではあるが。)驚いたのび太は翌日になってドラえもんに事のあらましを話す。
しかし、数日前から一時的に未来の世界へ帰っていたドラえもんは旅行疲れもあってか、まともに取り合ってくれない。さらに家の中でも壁に身に覚えのない落書きがあったり、ライターなどの小物がなくなるなどちょっとした事件が起こる。
結局のところ、これらは全て未来世界から来たマナーの悪い旅行者のせいだった。半透明の人間とは、実は四次元空間を移動する未来人の姿。
お化けや浮遊霊を疑ったが、むしろ優れた科学力のなせる技だったのだ。ただし、そんなタイムトラベラーのマナーが日増しに悪くなっていく。
とうとうドラえもんの元いた世界・22世紀の近未来では「時間旅行規制法」が制定されてしまう。これは未来や過去へ旅することを完全に禁止する法案だ。
未来へ帰ろうとするドラえもんにのび太は懸命にすがりついたが、迎えに来たセワシにも諭され、二人は離れ離れになってしまう。最終回とされるこの話では「うそでしたー!」というオチも、残念ながらない。
本当にドラえもんは未来の世界へ帰ってしまい、それっきりになったのだ。のび太の机はかつてタイムマシンの入り口として使われていたが、何のヘンテツもないただの引き出しに戻ってしまった。
「ここを開けるたびにドラえもんを思いだす」
最終回の最後はそんなのび太のつぶやきで終わっている。いつもファンに笑いや勇気を与えてくれるドラえもん。
ハッピーエンドかと思いきや、その最終回は驚くことに悲しげなものだった。ただこれは、アニメ人気が高くなるより前の1971年に描かれたエピソード。
また前述したとおり、長い間ドラえもんスタッフにも最終回とは認められていなかった物語である。加えて、似たような境遇の最終回にまつわるストーリーがこれ以外にも存在する。
他にも存在したドラえもんの最終回
実は藤子先生が描いたドラえもんの最終回は、全部で3話ある。なぜ最終回なのに複数話あるのか?
これについては諸説あって定かではない。だが、いずれも名作である。
ドラえもんがいなくなっちゃう!?
これは1972年に描かれたエピソード。のび太は物語の冒頭で友達からサイクリングに誘われる。
だが、この時ののび太は自転車に乗れなかった。小学6年生のくせに自転車に乗れない。
これはかなり恥ずかしい。彼もそんな事実がバレるのが嫌で、簡単にサイクリングの約束をしてしまったのだ。
とはいえ、やっぱり乗れないものは乗れない。困ったのび太はいつものようにドラえもんに泣きつく。
しかしドラえもんは「自分で努力しろ」と言わんばかりに冷たく突き放すのだ。だが、ドラえもんやひみつ道具に頼りっきりののび太は中々努力しようとしない。
それに見兼ねたドラえもんは「カラダが壊れた」とウソを言って未来へ帰ることにした。セワシにも一芝居打ってもらい、実際にドラえもんは元の世界に戻る。
未来に帰ったドラえもんはタイムテレビを通してのび太の姿を見る。そこには必死に自転車に乗る練習をするのび太の姿があった…
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未来へ帰ったあとのドラえもんにも視点を当てているからか、先ほどの話よりいくらかホッコリとした仕上がりになっている。ちなみにこれは、アニメ版・ドラえもん第一期放送時の最終回にも使われたエピソード。
後日談も存在しており、ちゃんとドラえもんが帰ってくるあたりも夢があっていい。
さようならドラえもん
一方で、こちらは1974年に作られた最終回だ。やはりこの話でもドラえもんが未来へ帰ることになる。
ただし他の最終回とは異なっていて、ドラえもんが元の世界に戻ることに対してのび太は嫌々ながらも納得する。そして最後の夜。
別れの前日ということもあって、眠れないドラえもんたちは夜の町内を散歩する。すると、そこに寝ぼけたジャイアンが現れる。
のび太はドラえもんが心配なく未来へ帰れるように「成長した自分を見せよう」と考え、このジャイアンにケンカをふっかけるのだ。半分寝ているとはいえ、そこはジャイアン。やはり強い。
何度向かっていってものび太は倒される。だがあまりのしつこさに、ジャイアンもとうとう気持ちが折れて負けを認めた。
ドラえもんものび太の気持ちを理解し、2人は泣きあった…そして2人は自宅に戻り、やがて眠りにつく。
のび太が目を覚ますと、そこにドラえもんの姿はなかった。寝ぼけて町中を歩いていたらしつこいほどのケンカを吹っ掛けられたジャイアンの不憫さは良いとして…
このエピソードは他2作品とは異なり、藤子先生的には「完全なる最終回」のつもりだったそうだ。なぜならこの最終回の最後のページに1つのゴミ箱が映っているのだが、そこに書かれている文字が「OWARI」だったのである。
マンガ家がひっそりと自分の意思を作品のどこかで伝える演出はよくあること。こんなちょっとした理由で…と思うかもしれないが、ドラえもんファン的には藤子先生の最終回に対する明確なメッセージだとしている。
ところがこの「さようならドラえもん」は、翌月号の小学四年生に早くも後日談が掲載されたのだ。
まるでウルトラマン!?最終回を覆す帰ってきたドラえもん
前回の話で未来の世界に帰っていったドラえもん。そんなドラえもんを町中で見たという話を、のび太はジャイアンたちから聞かされる。
それは4月1日…エイプリルフールのネタだったが、のび太は真に受けてスネ夫にまで馬鹿にされる。
家に帰ってから彼は悔しさに泣き崩れる。そこでふと、ドラえもんが帰る間際に残していった「ある箱の存在」に気付く。
その箱の中には「ウソ800」というひみつ道具が残されていた。これは言葉にした嘘をなんでも本当のことにするというアイテム。
使いかたを間違えると宇宙規模で大変なことになりそうな代物だが、ピュアな彼は「ドラえもんはもう帰ってこない!」という「ウソ」をついた。これによってドラえもんは現代に戻ってきて、全てはウソということで丸く収まった。
感動の最終回を覆す内容からクレームすら起きそうだが、当時も今もこのエピソードは意外と高い評価を受けている。それだけ「ドラえもん好き」の人が多い証拠だろうか。
このエピソードより後にもいわゆる「最終回」と呼ばれるものはある。しかし藤子先生が直接描き、かつ最終回と認めたものは後日談も含めたこの4話だけ。
アニメ版が人気を得たこともあってか、以降のストーリーでは一切最終回を描いていないのだ。ちなみに今回紹介したドラえもんの最終回は、いずれも小学館の子ども向け雑誌に掲載されたもの。
そして掲載刊を見ると全て3月号である。3月といえば、卒業や進級時のクラス替えなどで子ども達にとっても別れの多い季節。
うがった考えかたをすれば、そうした読者の状況とリンクしたストーリーとして最終回が描かれたのかもしれない。