こんなにあった…!耳をすませばの【裏設定と隠れキャラ】
淡くどこか懐かしい気持ちにさせてくれる「耳をすませば」。
子供から大人まで幅広い層に愛される映画の一つだが、宮崎駿作品はその細部にまで丹念な設定を加えることで有名である。それも読み手にとって気付きにくいように…
そこで今回は、耳をすませばにはどのような「裏設定」があるのかを紹介しよう。
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耳をすませば、時代背景の裏設定
耳をすませばの映画公開は1995年であり、原作は90年代前半に書かれている。時代背景は昭和から平成へと変わったばかりの時期である。
そのため町並みや服装が懐かしく感じるが、今の子供が見てもそれほど違和感はないだろう。
何故なら「耳をすませば」に登場する女子学生は、時代を問わず「等身大の女子中学生」として描かれた裏設定が存在するからだ。
主人公・月島雫の家庭は、共働きの両親と大学生の姉の四人家族。集合住宅に住まいを持ち、暮らしぶりもいたって庶民的である。
また心理描写においては、多少現代の若者たちと比べて率直でキザな部分がある。
だが中学生ならではの反抗期や異性に対する興味、進路の悩みはいつの時代も変わらないものである。
そんな普通の中学生だからこそ同世代の共感を集めやすく、大人も昔の自分とリンクさせて懐かしい気持ちに浸ることができるのだ。
耳をすませばの舞台
そんな「耳をすませば」の舞台になった場所がある。
それが、東京都多摩市の京王電鉄京王線の沿線「聖蹟桜ヶ丘」駅にある街だ。(作中では「京玉線杉宮駅」という架空の駅として出てくる)
この街の階段や坂道、神社など多くの場所がモデルとして使われていて、聖司の祖父が経営する「地球屋」のモデルもこの街の「桜ヶ丘 邪宗門」という喫茶店だった。
喫茶店は現在、廃業になってしまったが、後にロータリー近くに開業された喫茶店の「ノア」。ここにはバロン人形や耳をすませばファンが自由に書き込める「耳ノート」なるものが置かれている。
まさに「耳をすませばの聖地」ともいえる街だが、それにちなんだ町興しが行われたのは映画公開の10周年記念イベントが初であった。
その理由としては、スタジオジブリが正式に聖蹟桜ヶ丘を舞台だと発表していないことが関係している。
公認ではないため、ジブリに対して版画権などの協力を仰げないことがネックになっていた。
しかし、地元の学生や商店街の人々がボランティアで行った16mmフィルムの公開や背景画展は、三日間でおよそ2500人を集め大成功を収めた。
また、2012年には京王電鉄と市のコラボによって聖蹟桜ヶ丘の駅メロディが「カントリーロード」になった。
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現在も駅前に「耳をすませば・モデル地案内マップ」の看板が設置され、多くのジブリファンが訪れる観光地になっている。
公認でなくてもロケ地であることに変わりないので、ジブリファンなら一度は訪れたい街である。
耳をすませばの「映画と原作」の違い
「耳をすませば」には、原作と異なる裏設定がいくつかある。
以下で紹介していこう。
・映画では主人公たちの学年は中学3年だが、原作は中学1年の設定。
進路選択を迫られて将来への不安を抱く心理描写をうまく表現するために、学年設定の変更は重要だ。
・天沢聖司はヴァイオリン職人になりたがっていたが、原作では画家になっている。
彼がヴァイオリンを弾き、雫が自身で訳した「カントリーロード」を歌うシーンがある。画家の卵なら実現しなかっただろう。
・ムーンは黒猫の設定。
変更した理由は「魔女の宅急便」のジジが黒猫で、キャラが被るため。「ルナ」という名の姉猫もいたが、当時流行っていた「美少女戦士セーラームーン」のキャラと同一名だったので登場を取りやめた。
・聖司には兄がいて、その兄は雫の姉の汐と交際していた。
冒頭シーンで汐が誰かに手紙を出すシーンがあるが、裏設定では「彼宛ての手紙」だったと言われている。
設定の変更については宮崎氏の意見によるものが大きい。
このこだわりは彼ならではのモノだろう。
「隠れキャラ」の裏設定も多い!
耳をすませばではレアな隠れキャラもたくさん作中に登場する。
そのいくつかを紹介しよう。
・地球屋で修理していた古時計の時計盤に“Porco Rosso“と「紅の豚」の愛称が刻まれている。
・雫の部屋には「魔女の宅急便」のキキの人形が飾られている。
・図書館のシーンで本棚をよくみると「TOTORO」というタイトルの本がある。
・バロンの人形作りのシーンの造り師の机にトトロの置物が置いてある。
・雫がお父さんに弁当を届ける途中、駅ホームの向かい側に「海がきこえる」の里伽子と拓がいる。
このように耳をすませばでは、キャラの裏設定が豊富でスタッフの遊び心が垣間見れるのだ。何より共感する場面も多く、懐かしい気持ちになる。
きっと私たちの暮らしに密着した景色や、裏設定にこだわった製作スタイルが大きく関係しているからだろう。